2023.04.01
3月25日(土曜日)の診療を人数制限させていただいてた経緯を前のコラムでご紹介いたしましたが、実は翌26日にも東京で講演会がありました。新型コロナもだいぶおちついてきましたので、この講演会にも参加してきました。この会は、頭痛専門医を対象にしたものです。蛇足ですが、耳鼻咽喉科専門医で、かつ、頭痛専門医の資格をもっている医師は、昨年調べたところでは、全国で4人おります。耳鼻咽喉科で頭痛?といぶかしく思われる方もいらっしゃるかと思いますが、意外にも耳鼻咽喉科には多くの頭痛患者さんが来院されます。頭痛を経験されたことのある方は非常に多いので、当然かもしれませんが、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、めまい、なども頭痛と関連することがあるのです。
今回の講演会は、片頭痛の新規治療薬がテーマでした。片頭痛は、非常に疾病負荷の大きな疾患です。言い換えれば、日常生活における影響が非常に大きく、人によっては、片頭痛によって仕事を休む、仕事に行っても集中して働けない、さらには、家事をしたくても動けないなどが日常茶飯事に経験されます。片頭痛の無い人にはその苦しみが理解できないため、しばしば、心無い言葉をあびせて、頭痛持ちの方を無意識に傷つけていることもあるかもしれません。
新規治療薬として、2つのお薬が今回の講演会のテーマとなっておりました。1つは、片頭痛の予防薬で、皮下注射のお薬です。通常の頭痛予防薬の効果が乏しく、日常生活に影響を及ぼすような頭痛が月4日以上ある人に使用されます。当院でも数人使用させていただいておりますが、この薬によって頭痛日数やその程度が軽くなって非常に喜ばれております。今回の講演会では、この薬が効きやすい人、効きにくい人がいることがテーマとなっていました。通常は3-4か月使用して、その有効性が判定されます。
もう1つの新規治療薬は急性期治療薬です。すなわち痛み止めの代わりとして使用するお薬です。片頭痛が軽ければ、バッファリンやカロナール、ロキソニンなどが使用されますが、このような鎮痛薬が効きにくい患者さんが多くいらっしゃいます。その様な方には、トリプタン系のお薬が使用されますが、血管収縮作用があるために、狭心症や脳梗塞などの血管系の持病がある方には使用できません。今回テーマとなったお薬には、血管に対する作用がないため、このような患者さんも安心して使用できます。ただし、血液脳関門を通過する(脳にも移行する)ため、めまいや眠気などの副作用もあります。この薬をどのように皆様にお届けするのが良いかが、テーマとなっていました。
片頭痛急性期治療薬(痛み止めやトリプタン)を月に10日以上使用していると、慢性頭痛に移行して、頭痛が非常に治りにくくなります。これは「薬剤使用過多による頭痛」と呼ばれます。ご注意ください。信州大学や一ノ瀬脳神経外科にも頭痛外来は開設され、話題となっておりますが、片頭痛でお困りの方は、当院にもご相談しただければ幸いです。「頭痛外来」と銘打ってはおりませんが。。。