2021.10.21
前回は、食物アレルギーの概要を書かせていただきました。そして、アレルギーの原因物質をアレルゲンと呼ぶことにも触れました。さて、このアレルギーの原因物質がどこから体に入り込むのでしょうか?
アレルギーの原因物質(アレルゲンと呼びます)が体内に入り、それに対する免疫が構築されることを感作とよびます。すなわち、感作とはアレルギー反応の準備段階のようなものです。感作が成立した後に、次に原因食物を食べた際にアレルギー反応が引き起こされます。
この感作の経路ですが、最近、いくつかの異なった経路があることがわかってきました。それでは、どのような経路があるのでしょう。
まずは腸管です。これは誰でも想像できますね。食べたものは腸管を通過するのですから。実は、腸管粘膜が正常であれば、むしろ食べることによりかえってアレルギー反応がおきにくくなる(これを免疫寛容とよびます)ことがわかっています。ところが、何らかの原因により腸管の粘膜バリアを通過してしまったアレルゲンは、感作を引き起こします。そして、食物アレルギーを引き起こすと考えられています。
皮膚も感作の経路としては重要です。特に乳児湿疹やアトピー性皮膚炎などがあると、皮膚のバリアが弱くなっているため、簡単にアレルゲンが皮膚から取り込まれ感作が成立します。ですから、最近では赤ちゃんが生まれたら、保湿剤をこまめに使用し皮膚を守ることがアレルギーの予防になると言われ、スキンケアの重要性が強調されるようになっています。
他にも経気道感作が挙げられます。例えば、ネコを飼っていると、空中に浮いたネコのフケなどから感作され、そのアレルゲンと構造が似ている豚肉が食べられなくなることがあります。これは経気道感染の例の1つです。さらに、花粉症になると、その花粉アレルゲンと構造が似た果物や野菜などを食べると、口の中が腫れたり、かゆくなったりすることがあります。これを口腔アレルギー症候群(あるいは花粉―食物アレルギー症候群)と呼びます。有名なところでは、白樺花粉に感作されると、モモやサクランボを食べると口の中がかゆくなる人がいます。
いろいろなアレルゲンの侵入経路(感作経路)があることがおわかりいただけたでしょうか? さて、乳幼児の食物アレルギーは自然に治ること(寛解)があることを前回お伝えしましたが、実は、皮膚感作ではアレルギーが寛解することが少なくないことが明らかにされつつあります。一方で、腸管感作ではほとんどアレルギーが治ることがありません。感作経路によって治りやすさに差があるのです。ですから、同じアレルギーでも、治る人と治らない人がいるのかもしれません。
次回は、珍しいアレルギーについて説明したいと考えています。どうぞ、ご期待ください。