第63回日本鼻科学会 学会報告2 光触媒 

2024.10.01

第63回日本鼻科学会総会参加報告の第2回目です。

今回は鼻科学とは直接関係のない、「光触媒」についての講演内容を簡単に報告します。

演者は、東京大学栄誉教授で、以前東京理科大学の学長もされていた藤嶋 昭先生です。先生は、植物が光をあびると二酸化炭素を酸素に変換する、あの「光合成」を別の方法で再現することを目的に研究を始めたそうです。そして、酸化チタンという物質にたどりつき、これを板状にし、水槽に入れ、光を当てると水を分解し、酸素を発生することを発見しました。それ以前に酸化亜鉛という物質で同様の事象がおこることを海外の研究者が発表していましたが、酸化亜鉛は溶けてなくなってしまうそうです。ところが酸化チタンは溶けないとのこと。この論文は世界的科学雑誌Natureに1972年にアクセプトされ掲載されました。

実は日本では、酸素が発生するという事象よりも、この反応の際に同時に発生する水素にが注目されたとのこと。そうです、エネルギーの源にもなる水素。しかし、その回収効率は非常に悪く、当時の技術では実用化が難しかったとのことでした。

研究を続けるうちに、この技術が、酸化チタン表面の細菌やウイルスを殺菌することも判明。現在の空気清浄機や、抗菌コーティングにも応用されるようになっています。

さらに、酸化チタンを噴霧状にして、ガラスにコーティングすることにより、水が疎水性から親水性に変化し(水が水滴になることを防ぐ)、ガラス表面が曇りを防ぐことも発見されました。ほとんどの日本車のサイドミラーにこの技術が使われているそうです。くもらない鏡、何という発見でしょう! 建物の外壁材のコーティングにも応用されています。「雨がふると汚れが簡単に洗い流され、何年たってもきれいな外観を保てる」、そんなTVコマーシャルで見て、うさんくさいと疑っていた自分を恥じました。

現在では、様々な分野に応用され、人類の日常生活に貢献している、何と素晴らしい研究でしょうか! まだまだ、多くの分野でその応用が検討されているようです。