第63回日本鼻科学会 学会報告1 IgG4関連疾患、歯性上顎洞炎

2024.10.01

 9月26日、27日と、新宿の京王プラザホテルで開催された第63回日本鼻科学会総会に参加させていただきました。

休診になりご迷惑をおかけいたしました。

 この学会は、現地への直接参加および後日施行されるオンデマンド配信にて参加が可能です。オンデマンド配信で後日WEB聴講できる演題もありますが、その数は限られています。

 今回のコラムでは、現地聴講で印象に残った、2つの話題について報告します。専門的になるので、興味がない方はスルーしてください。

  • 「IgG4関連疾患に伴う慢性副鼻腔炎はIgG4関連疾患か?」
  • 「歯性上顎洞炎に対する治療および医療連携―耳鼻咽喉科医と歯科の連携」はどのように行うのが最適なのかー」

少し、難しい表題ですね。涙腺や唾液腺、後腹膜、すい臓、前立腺、甲状腺など、全身のさまざまな臓器において、免疫グロブリンの1つであるIgG、なかでもIgG4が組織に集積し、線維化を引き起こす疾患が日本で提唱されました(信州大学内科)。この疾患、耳鼻咽喉科では涙腺、唾液腺腫脹でみつかる場合が多いのですが、これらの症例には慢性副鼻腔炎が高率に合併することが知られています。また、慢性副鼻腔炎の中でも、好酸球性副鼻腔炎という難治性の副鼻腔炎の一部では、血清のIgG4の増加がたびたび認められます。しかし、これら副鼻腔炎がIgG4関連疾患に属するか否かについては、結論が出ていません。その理由は、慢性副鼻腔炎には、IgG4関連疾患に特徴的な、組織の線維化が認められないからです。今回のシンポジウムでも、これについて議論がありました。まだまだ、結論は出ないようですが、将来的には一部の慢性副鼻腔炎はIgG4関連疾患として認定される予感がいたします。

歯周病や歯の治療後(根管治療)、虫歯などの炎症が波及して、副鼻腔の1つである上顎洞に炎症が起こる疾患が、歯性上顎洞炎です。頬っぺたが痛い、臭いにおいがする、などの症状で受診されます。この治療方針について、歯科治療を優先するべきか、あるいは副鼻腔炎治療を優先するべきかについては以前から議論があるところです。これについて、私たちも検討し、学会発表したことがあり、個人的には、「副鼻腔炎治療を優先しつつ、歯科治療も併用する」を基本路線として考えております。非常に難しい問題をはらんでおり、今回も議論の対象となりましたが、「使える歯を温存するため、副鼻腔炎治療(内視鏡下手術を含む)を率先して行う。歯科とも連携をすすめる」。これが、私の結論です。これに沿って、今後も治療を行っていきます。