2021.09.30
今回とりあげるのは「外リンパ瘻」です。
外リンパ瘻自体は新しい疾患とは言えませんが、近年その診断法が大きく変わりました。詳しくは後に述べたいと思います。
外リンパ瘻は、内耳の外リンパ腔と中耳の間に穴ができて、外リンパ腔内のリンパ液が中耳に漏れてしまう病気で、めまい、難聴、耳鳴などが生じます。
めまいだけのこともありますし、難聴と合併したり、突然耳が聞こえにくくなる突発性難聴の原因になったりもします。外リンパ瘻の原因は4つのカテゴリーに分類されていますので簡単に説明します。
カテゴリー1は、外傷や、中耳の病気などによって生じるものです。耳かきによる外傷でも起こります。
カテゴリー2は、ダイビングや飛行機搭乗など、内耳に圧力がかかって生じるものです。
カテゴリー3は、鼻かみや、くしゃみ、重量挙げなど自分の行動によって内耳の圧が上昇するのが原因です。
カテゴリー4は、原因がはっきりしないものです。
最近、外リンパ腔内のリンパ液に特有なタンパクとして、CTP (cochlin-tomoprotein)が同定され、診断がより正確になりました。鼓膜を切開し、中耳内を洗浄した液を集め、液中のCTP濃度を測定して診断します。このCTPは、私が以前勤めていた埼玉医科大学耳鼻咽喉科・神経耳科の池園教授によって発見されたタンパクです。それまで、海外では外リンパ瘻の存在自体に懐疑的な目が向けられていましたが、CTPの発見によってこの疾患の存在がより確かなものへと変わりました。まさに、画期的な診断ツールと言えるでしょう。
外リンパ瘻が確認されれば、手術によって外リンパ腔と中耳の間にできた穴をふさぐことで治療が可能です。